出でよ、浪漫派理系!

タイタンの妖女カート・ヴォネガット・Jr.著(早川書房)を読み終えた。中学時代以来20年弱ぶりに。
なんて壮大!なんて先見的!なんてチャーミング!そして、なんて人間的!!
明るい未来を思い描くことが難しくなった今にあっても、それよりはるか前に、まだ「そのもっと先」を確実に構想していた、「未来フェチ」な人たちがいたのだ。
こちらも毎日、論文だ、科学的根拠だ、何だ、とせわしなく走り回っているが、それらを凌駕する「実のある」インスピレーションを与えてくれるものの一番は、やっぱりSF小説だと、つくづく思う。
近頃言われる子供の理系離れとか、本屋さんから軒並みハヤカワや創元のSF文庫が占める割合がみるみる減っていることとかは、さびしい限りだ。けど、もはや文系/理系の世界ではない。科学とて文脈なしには生きられないのだ。文系と理系との間の、その高そうで低いハードルを、人懐っこい顔して越えてくる人間が何人いるかで、世の中の進む方向が変わると思う。